【TECH BLOG #61】社内向けUnity3D勉強会を定期開催してみて

グリーエンターテインメント株式会社 エンジニア部 技術戦略チームの立花です。
このブログ記事では、半年ほどUnity3D勉強会を開催した経験に基づき、実際のカリキュラムや工夫した点、参加者からのフィードバックを共有します。これから3Dを勉強される方、またUnityの勉強会を検討されている方にとって参考になれば幸いです。
はじめに
まずUnity3D勉強会を開催した背景に関して説明します。
昨今のゲームはモバイル向けのプラットフォームでも3Dが主流です。グリーエンターテインメントで扱っているゲームタイトルの2D/3D比率を見るとまだ2Dの方が多く、3D開発が未経験の方も一定数おりました。そこで、先を見据えたうえで、まずは全体的な3D開発基礎力の強化を図るため、社内のエンジニア向けにUnity3D勉強会を実施しました。
勉強会概要
開催した勉強会の概要を以下に記載します。
●目的:
○Unityを用いた3Dゲームの開発基礎力の向上
●対象者:
○Unityの2D経験はあるが、3D開発は初めての方(10名程度)
●実施期間:
○約1年
●開催頻度:
○月2回、2時間
●会場:
○ZoomやMeetを用いてリモートで実施
運営体制と勉強会の進行
技術戦略チーム所属のエンジニア3名でUnity3D勉強会の運営を行いました。
Unity3D勉強会の進め方としては、まず隔週で講師陣でミーティングを実施して勉強会で使用する教材を決定します。そして、勉強会当日までに、勉強会の流れや話す内容をSlackやハドルミーティングで決めていきました。使用する教材は前もって勉強会参加者に周知を行い、事前準備と事前学習をお願いしました。
勉強会当日の進行は、運営チームがファシリテーターを担当し、事前学習範囲で指定した教材の補足説明を行い、質疑応答を都度行う形式で進行します。また、理解度を確認するために都度参加者に質問や小テストを織り交ぜながら進めました。勉強会の実施後は、アンケートを募り、次回ミーティングでアンケートのフィードバックを反映し進め方の調整を行いました。
カリキュラム
実際のカリキュラムと勉強会で使用した教材を実施順にご紹介します。
なお、この記事の執筆時点では、全カリキュラムは終了しておらず、グラフィックスの途中まで実施しております。そのため、グラフィック以降は未実施であることにご留意ください。
1.Unity3Dの概要
○教材:
■Unity Leaning 3DGame Kit – Unity Learn
○狙い:
■レベルデザインの教材を通してUnityの機能の適用事例を学ぶ
■ProBuilderを用いたグレーボックスを経験する
2.カットインの作成
○教材:
■Unit 5 – Cinematography – Unity Learn
○狙い:
■3D空間上のカメラ操作について学ぶ
■Cinemacineで出来る事を学ぶ
■カットイン制作を通じてTimelineの操作を学ぶ
3.NaviMesh
○教材:
■Unity NavMesh – Unity Learn
○狙い:
■経路探索アルゴリズムの概要とNaviMeshの仕組みを学ぶ
■NaviMeshの各種コンポーネントの適用事例について学ぶ
4.アニメーション
○教材:
■Introduction to 3D Animation Systems – Unity Learn
○狙い:
■アニメーション全般の機能について学ぶ
■アニメーションインポート時の設定について学ぶ
5.グラフィックス
○教材:
■URP 3D サンプル
○狙い:
■レンダリングパイプライン(URP)、シェーダの概要を学ぶ
■FrameDebuggerの見方と使い方を学ぶ
■ライト、シャドウ、ポストプロセスの仕組みと適用方法を学ぶ
■レンダリングパスの使い分けを学ぶ
■最適化の手法について学ぶ
6.3Dゲーム演習
○教材:
■John Lemon’s Haunted Jaunt:3D 入門 – Unity Learn
○狙い:
■勉強会の総復習
ここで紹介している教材は、Unity Learnの学習リソースが中心です。いずれも初心者向けの内容であるためUnity初学者の方でも問題なく学習いただけます。但し、実際の勉強会は教材以外に現場の事例や教材で触れられていないトピックの補足などを適宜行いながら進めており、教材はあくまで補助的に使用していることにご留意ください。
運営の工夫
教材と学習内容の選定に関しては、限られた時間で最大限の成果を出せるように、学習する内容は主にモバイルのゲーム開発を想定して、全体のうち重要な2割に絞り込むことを意識して取り組みました。加えて、参加者ひとりひとりが疑問を持ちながら学んでもらえるように体験型の学習を重視して教材と勉強内容を決定しています。
また、運営チームは別で主業務があり、勉強会の準備に割ける時間は多くありません。そのため教材をゼロから準備することは時間的に難しく、Unity Learnで取り扱っている無料の学習リソースを教材として使用しました。
Unity Learn以外の選択肢としてUdemyなどのオンライン講座も選択肢に上がるでしょう。しかし、有料であることや、日本語対応の教材が少なく参加者全員が一緒に学ぶ教材としてはハードルが高かったこともあり本勉強会での採用は見送っています。なお、Unity Learnの教材にも英語が含まれたものがありますが、日本語の翻訳と字幕を有効にして進める分には学習の障害とはなりませんでした。
また、今回の教材で使われているUnityのバージョンは古い場合が多く、最新のUnityバージョンを使用する場合は変更点や動作の事前確認が必要でした。Unityバージョンの違いによりコンポーネントが変わっていたり、UIが変更になっている場合が多いためです。今回はなるべく最新のUnityバージョンで学んで欲しかったため、Unity2022.3LTSで事前調査を行い、バージョンによる変更点の共有は適宜行いました。
参加者からのフィードバック
理解度を確認しながら進められた点や、実際の開発現場の知見や最新のUnityバージョンで追加された機能にも触れながら勉強会を進行したおかげで、3D経験の有無を問わず知識面で何かしら得るものがあったと肯定的な意見が得られました。
カリキュラムの中身に焦点を当てると、「カットインの作成」で学んだカメラやTimelineの操作に関しては、実際の業務でも役に立ったとの声がありました。また、NaviMeshに関しては、ゲームジャンルの関係で今まで触れる機会がなかった方も多く、今回のカリキュラムの中では一番評判が良い勉強会でした。
全体として、実際にUnityを触りながら学んだ勉強会や教材の評判はよく、体験型学習の勉強会の満足度と効果の高さが示される結果となりました。
一方で、今後開発する上での懸念事項を確認したところ、下記のような状況でした。
●3Dデザイナーチームと協力してどのように開発を進めていくかイメージが沸かない
●3Dアセットがどのように渡され、どのように取り扱うか分からない
●キャラクターに設定されているボーンについてよく分からない
総じて、3Dデザイナーの作業領域を含めた3Dアセットに対する苦手意識があることがわかります。
今後、これら懸念事項を解消できるように3Dデザイナーチームとの連携やDCCツールの体験会などの実施を検討中です。
まとめ
Unity3D勉強会を運営してみて、私自身学ぶことは多かったと思います。勉強会を通して、皆がつまずきやすいところや知っているようで知らなかったことなど勉強会ならではの気づきも得られました。今回のUnity3D勉強会は本年度中には全てのカリキュラムを完了する予定です。来年以降は、より実践的で踏み込んだ学習を展開できればと考えております。
このブログ記事が、Unity 3Dをこれから学ぼうと考えている方や勉強会の開催を検討されている方の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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